雑考閑記

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雑な考えを閑な時に記す

初夏の桔梗、立ち葵、ひまわり?

 前の記事で触れた松尾橋の西詰に植えられた桔梗。

ks2384ai.hatenablog.jp

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 桔梗といえば秋の花という印象もありますが、実は6月には咲いているものでありまして、9月の半ばまでが見ごろという息の長い花であります。 

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 京都で桔梗といえば、安倍晴明の五芒星(いわゆるセーマン)を桔梗紋ともいうのでありますが、あれは桔梗の花を正面から見た際の五つの角を五芒星の五角に譬えたものだそうで。

 また明智光秀の家紋も桔梗であります。これもある意味で京都のつながり。

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 私は桔梗の花が好きでして、秋の花(としておきましょう)の内では彼岸花と双璧を成します。

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 蕾の膨らみもどことなく恥じらっているようで愛らしい。

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 野生の桔梗は環境省レッドリストに掲載されており、カテゴリは『絶滅危惧II類 (VU)』「絶滅の危険が増大している種」いわゆる絶滅危惧種です。確かに野生種はほとんど見たことがありません。

環境省_レッドリスト平成31年1月公表:環境省レッドリスト2019:95ページ掲載)

 

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f:id:KS-2384ai:20190715064408j:plain こちらは立ち葵。

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 こちらは向日葵ことひまわり、の初夏の姿。種の部分が丸っこくて面白い。

 いや、もしかしたらひまわりではないかも。植物って似ているのが多いから。

 

 そういえば普通の葵って見たことないなと思ってググったところ、アオイは科の名前でそのものアオイという名の植物はいないようだ。あと葵と聞いて思い浮かぶ葵祭や徳川の葵のフタバアオイアオイ科ではないと。むろんひまわりもアオイ科ではない。

 博物学分類学)は難しい。

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 なんか作り物っぽいバカでかい草。

水無月の夏越の祓する人は

 6月末に朝一の強行軍で京都へ行ってきた。

 晦日の大祓、いわゆる夏越の祓に参加するためだ。

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 私はこの夏越の祓が好きだ。ここ数年はなるべく行くようにしている。一般的には12月晦日(大晦日)の年越の祓が、翌日の正月との相乗効果もあってよく知られる行事となっているが、その対となる夏越の祓ももっと現代の人に知られてもよいと思う。

 夏越の祓でよく知られているのは茅の輪くぐりだろう。唱詞を口にしながら茅の巨大な輪をくぐるあれだ。それなりの規模の神社では6月末の時期には茅の輪が出ているだろう。

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 京都の松尾大社に着いたのは9時半ごろ。

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 当日は朝からずっと雨が降っていて、傘がなければとても出歩ける状態ではなかった。それでも人は途絶えることなく、続々と茅の輪をくぐっていく。

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 形代に名前を書いて納め、境内で志納して短冊のついた茅を授かる。

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 短冊には『水無月のなごしの祓する人は千年の命のぶといふなり』との歌が記されている。意味はそのまま。茅の輪をくぐる際に唱える唱詞のひとつだ。

 式は15時からなのでかなり空きがある。その時間を利用して他の神社の茅の輪巡りへ赴く。

 

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 桂川のほとりには例年通り桔梗が咲きはじめていた。

 

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 立ち葵も美しい。

 

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 松尾橋より上流、嵐山の方を望む。愛宕山が雲に覆われている。

 

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 桂川を渡り松尾橋のバス停へ。

 3系統で四条河原町へ出て高島屋でトイレ休憩。4系統に乗り換えて賀茂別雷神社(以下、上賀茂神社)へ。

 

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 土砂降りの上賀茂神社

 

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 傘をさして茅の輪をくぐる。

 

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 上賀茂神社の人形(形代)。松尾大社ですでに記しているので遠慮しておく。

 雨脚が強くとても外に長居できる状態ではないので早々に退散。

 

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 46系統で祇園、八坂神社へ。道のり的には少し遠回りとなるが、乗り換えなしで行けるのでかなり楽だ。車内から土砂降りの雨を見ているとなんとなく優越感に浸れる。

 

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 明日は長刀鉾町御千度。祇園祭の行事だ。祇園祭7月1日から始まる。

 雨が上がってきた。

 

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 茅の輪は一応設置されているが、八坂神社に関連して言うのならば、こちらでの夏越の祓は7月31日、祇園祭の最終行事となる疫神社夏越祭がむしろ本番かもしれない。疫神社は蘇民将来を祭神とするが、この蘇民将来の逸話がそもそもの茅の輪の由来とされている。岩手の蘇民祭もこの蘇民将来に由来しているのはよく知られたところである。

 さりとて6月30も夏越の祓には違いない。茅の輪に行列ができていたので並ぶ。

 そもそもこれが何かわからない人が多いのだろう。スマホで(おそらく)検索している人が多かった。いや、単に時間をつぶしていただけかもしれない。

 しかし少なくとも前の団体は、会話の端々から茅の輪くぐりを調べていたのがわかった。『水無月の~』の唱詞の『千年の命』を「せんねん」と読んでいたのはご愛敬。短歌だから「ちとせ」でないと字余りになってしまう。ただ、唱詞を覚えられないから願い事を言いながらくぐろうと言ってそのままくぐって行ってしまった。大祓は罪と穢れを払う儀式なので、願い事を口にしながらくぐるとそれも払い落とされてしまうのではないだろうか。団体が関西のおばちゃんグループなら声をかけていたかもしれないが、若いグループだったので黙っていた。

 

 八坂神社は場所柄、松尾大社上賀茂神社よりも人が多い。特に海外からの観光客の割合がまったく違う。雨も上がって人がますます増えてきたし、時間もいいころ合いなので松尾大社へ戻るとする。

 四条河原町まで歩いて3系統で松尾橋へ。

 ちなみに四条通の東の突き当たりにあるのが八坂神社で、西の突き当たりにあるのが松尾大社だ。つまり四条通の端から端まで往復したことになる。

 

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 再びの松尾大社。もう傘は差さなくてもよい。

 大祓式では大祓詞を6度繰り返し、30分の休憩。

 

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 昼過ぎまで雨が降っていたのに、雲間から太陽が差し込むほどに。一気に暑くなる。

 

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 形代に息を吹きかけて流していく。罪と穢れを水に流す。しかるに先ほどまでの雨も禊の雨であったか。激しかったのはそれだけ罪と穢れがあったのだろうと解釈する。

 

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 最後は神官を先頭にみんなで茅の輪をくぐって終わり。

 

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 また。

 

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 晴れ間が見えるほどに天候は回復していた。

 

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 鳥居と桔梗と阪急。

 桔梗はまた秋にでも見に行こうかな。

 

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 授かった茅は束ねて輪っかを作る。我が家では年越の祓まで玄関に掲げておいて、左義長(とんど焼き)でお焚き上げ。

 

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 茅と水無月上賀茂神社の茅の輪守。

 そうです、京都で夏越の祓といえば水無月を忘れてはいけません。

 

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 松尾大社では露店が出ていた。

 この時期、京都の和菓子屋では必ずと言っていいほど見かける水無月。これがないと夏が来たという感じがしません。意外と値段差があるのですが、食べ比べもおつなもの。関西だとスーパーの和菓子コーナーでも売っていたかな?

 

 おまけ

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 1枚目:松尾大社、2枚目:上賀茂神社

 茅の輪のくぐる回数は神社の案内によって違う。

 松尾大社は3回(左、右、正面)。上賀茂神社は4回(左、右、左、正面)。

 八坂神社には案内なし。

 ネットで調べると一般的に4回らしいし、僕も基本は4回と覚えていた。しかしそれはあくまで基本であって、松尾大社でくぐるのならば掲示通りに3回でよいのだろう。出雲や伊勢では二礼二拍一礼でないのと同じで、それぞれの場所の作法があるものだ。なので松尾大社では3回くぐり、上賀茂神社と八坂神社では4回くぐった。

 

 

 

 

歩かなくても百合の花

 百合(テッポウユリ?)が見ごろなので行ってきた。

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 あんまり近づきすぎると黄色い花粉が花弁の下にべったり付着していて、なんだか涎みたいである。だから遠くから見るのがよい。

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  まだ慎ましく隠れているものも。

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  ちょっとおしゃれっぽい角度で撮ってみる。

 見に行ったのは夕方で、ここのところにしては珍しい晴れた夕空に白がよく映えた。

『時刻表おくのほそ道』

時刻表おくのほそ道

宮脇俊三

文春文庫、1984年1月25日第1刷

 

(問)以下に挙げる本作収録路線のうち、2019年6月現在も旅客営業をしている路線はいくつあるか。社名変更や会社形態、運行会社の変更は問わない。

 

  1. 三菱石炭鉱業大夕張線(北海道)
  2. 野上電気鉄道(和歌山県
  3. 有田鉄道和歌山県
  4. 紀州鉄道和歌山県
  5. 津軽鉄道青森県
  6. 福井鉄道福武線福井県
  7. 福井鉄道・南越線(福井県
  8. 鹿児島交通・枕崎線(鹿児島県)
  9. 伊予鉄道愛媛県
  10. 小湊鉄道(千葉県)
  11. 銚子電気鉄道(千葉県)
  12. 鹿島臨海鉄道・鹿島臨港線(茨城県
  13. 鹿島鉄道茨城県
  14. 日立電鉄茨城県
  15. 上毛電気鉄道群馬県
  16. 上信電鉄群馬県
  17. 新潟交通新潟県
  18. 蒲原鉄道新潟県
  19. 一畑電気鉄道島根県
  20. 同和鉱業片上鉄道線(岡山県
  21. 別府鉄道(兵庫県
  22. 南部縦貫鉄道青森県
  23. 岩手開発鉄道岩手県
  24. 栗原電鉄(宮城県
  25. 下津井電鉄岡山県
  26. 加悦鉄道(京都府
  27. 遠州鉄道静岡県
  28. 岳南鉄道静岡県

 単行本は昭和57(1982)年4月。

 初出は『オール讀物』昭和56年1月号~昭和57年4月号?(※)
(※)あとがきに『16回にわたって連載』『連載完結後、すばやく本にしていただいた』とあり、単行本が4月に出ているのを鑑みるに休載はないかと思う。

 

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『大大阪モダニズム遊覧』

大大阪モダニズム遊覧

橋爪紳也

芸術新聞社(2018年12月1日 初版第1版)

大大阪モダニズム遊覧

大大阪モダニズム遊覧

 

 君は大大阪時代を知っているか。
 いや、知らなくても問題ないんけれど。

 

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『時刻表昭和史』

時刻表昭和史
宮脇俊三
角川文庫、昭和62(1987)年7月10日初版
※昭和55年1980年7月に角川選書100として発売されたものの文庫化

時刻表昭和史 (角川文庫)

時刻表昭和史 (角川文庫)

 

 

題名の『時刻表昭和史』は「私の」を冠すべきであったかもしれない。(中略)概説的な時刻表通史を期待された読者がおられたとすれば、申し訳ないと思っている。(「あとがき」より)

 私も最初はその口であった。しかし、それを予見していたかのようにあとがきで謝られてしまってはかえって恐縮である。ここに書かれている通り題名に昭和史と銘打ってあるが、本作は宮脇俊三が青春時代を回顧する自叙伝に近い。

 扱われる期間は昭和8年の小学生時代の思い出から昭和20年8月15日まで。
 むろん鉄道好きの宮脇俊三であるから、いずれの章においても描写の中心となるのは鉄道だ。12の列車ごとに章立てされており、この各列車への乗車記録を中心に、その前後の身の回りの思い出や時代の出来事などが活写されている。

 

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『幽女の如き怨むもの』

幽女の如き怨むもの
三津田信三
講談社文庫(2015年6月12日第一刷)

幽女の如き怨むもの (講談社文庫)

幽女の如き怨むもの (講談社文庫)

 

 読後に怪異の謎が尾を引くように残るシリーズで、本作もそういう部分があるにはある。
 が、なぜだろう、僕は逆に推理部分に納得しすぎてしまい、これまでの作品に感じた尾を引く印象を覚えなかった。

 

推理小説
ネタばれ注意

 

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