アイコンと著作権
Twitter やブログのアイコンを新しいものに変えてみた。
ということを毎度の長々した文章で書いておく。
新アイコンは前サボというか運行標識板、種別板のようなものにした。いくらかの会社のものを参考にデザインの下絵を描いて、それを元に同じ蒸奇都市倶楽部の人見広介くんにアレンジして興してもらった。画像化するにあたっての参考画像の検索ワードなどは特に教えてはいたものの、特に「この会社っぽくしてね」とは伝えていなかったが、結果的に大阪の大手私鉄っぽい仕上がりとなったような気がする。といっても、現行の定期列車で種別や行先を掲げて走っている会社はほとんどないが。
珍しく趣味が垣間見えるが、そうなるまでに紆余曲折があったので語る。
旧アイコンは昔のツイッターのデフォルト画像だった卵に、ペイントで割れ目を入れたものであった。そちらが本当の意味での初代で、直近までのものは二代目にあたる。初代のそれはデフォルト画像を加工したものだったので、新刊の著者近影として使うのは権利的に危ういんじゃないかという判断が働き二代目の登場となった。といっても実物の卵を軽く割ったものを撮影、その写真を人見君がペイント風に加工してくれたもので、ほぼ直近の意匠を引き継いでいる。というかまんまだ。その二代目のお披露目は蒸奇の『手向けの花は路地裏に』(2016年3月)刊行にあわせてだから、もう3年前の話。
旧アイコンは当座の間に合わせのつもりでいた。そのうちに何か権利的に差し支えのない本アイコンにしようと考えていたからこそ、デフォルト画像を子供の落書き程度にペイントでちょちょいのちょいしたわけだ。
しかし肝心の本アイコンが一向に決まらない。僕の優柔不断によるところも大きいが、それ以上に著作権的な部分も含めてめちゃ悩んでいた。
最初は「あかべぇ」グッズ(会津若松の郷土玩具、工芸品の「赤べこ」をモデルにした会津若松のご当地キャラクター。福岡にあるゲーム会社じゃないよ)を現地で買ってそれにしようかと思っていた。けれど「あかべえ」は会津若松のマスコットキャラクターだから権利的にはあかんと思いとどまる。
なら普通の「赤べこ」にしようか。それなら僕が好きな「さるぼぼ」(飛騨の人形、工芸品)や「三春駒」(郡山市の郷土玩具・工芸品)でも良いかもとと迷った。が、こういった郷土的な特徴のある工芸品の利用も権利的に怖いところがある。というかネットで調べても不透明で素人が使うにはうかつが過ぎる。
第三の顔(黒い太陽。太陽の塔の背面にある顔。これも大好き)もいいなと思ったのだけれども、こちらは工芸品以上にいけない。岡本太郎の著作物。
そもそもなんでそんなに著作権を気にしているのかという話である。
ツイッターのアイコンをそのまま同人誌等での著者近影としたいからなのよ。
『蒸奇都市倶楽部』という団体は著作権がサークルに帰属する物品(本)を作っては売るという活動をしているわけで、そうした物品に他の団体や個人が著作権を保有するものを使用するのは、引用として行うか、許諾を得るかしないといけない。そうなると、
ツイッターのアイコンや著者近影としての利用は引用といえないだろう。(アイコンとしての使用が「主」になっていて、まったく「従」ではない。)
冊子を何部も刷って売れば商利用にあたるだろう。
許諾を得てまで使うものか?
といった種々の問題が生じてくる。
法の解釈を素人が下すのはあまりにも危険だ。
こんな危ない橋は渡れない。
ちなみに同人誌には「頒布」(≒販売ではありませんよ、非営利ですよ、商用じゃないですよ)という『建前』でやっている文化はあるにはあるのだけれども、これはパロディなどの二次創作での「ファン活動」が主流でなったから生じたものであると思っている。*1
蒸奇の場合はオリジナル(一次創作)であるからそういう建前は不要だ。
いや、そもそも僕は蒸奇の活動はれっきとした販売行為だと思っている。作っては売って対価にお金を得ているのだから、著作権が自身らに帰属する作品の販売にあたるのは疑いようがない。そこで後ろめたそうに口を濁す理由もないと僕は考えている。*2
蒸奇の販売行為は思いっきり赤字で、そもそも同人誌だから採算度外視ではあるのだけれども、そうはいっても商品として売っているわけで、またそれによって価格(頒価)の多寡を問わずお金をもらっている。そうした商品(蒸奇都市倶楽部の著作物)に蒸奇都市倶楽部が著作権を保有しないものを使うのはもってのほかだ。
なによりアマチュア(素人文芸)であろうとも、作品を作るものの端くれとして、著作権を侵しかねない行為と認識している部分に踏み込むような鈍感さであってはならないとも思う。
とある程度までは結論が出ていた。
しかし好きな工芸品をアイコンにしたいなあという誘惑も断ち切りがたく、著作権の部分と行ったり来たりで悩んでいたわけだ。仮に僕が「あかべぇ」や「さるぼぼ」を個人的なアイコンとして使うだけなら黙認される可能性はあるだろう。(それだってある程度は蒸奇の活動から切り離さなければならないだろう。)
あるのだけれども、即売会でご挨拶をしたりするうえでツイッターアイコン=当人ということにすると認知してもらいやすいし、そうするなら名刺やカバー折り返しの著者近影も統一してしまえば都合がよい。
となると新アイコンはオリジナル一択となる。
かくして著作権が絡まない新アイコンを何にしようかと(蒸奇発足からの)5年ぐらい悩んでいて、せっかく僕を主著とする新刊が出るこの2019年10月11月*3 に合わせようと思い立ったが吉日、人見君に発注した次第である。
当初はアイコンや名刺などを、新刊『暗翳の火床』初頒布となる10月のテキレボに合わせてすべて一新しようと企図していたのだが、そちらは残念ながら台風で中止となってしまい、新刊の初頒布が11月24日の文学フリマ東京へずれこんだ。しかし僕は文学フリマに合わせて上京できず、結果としては新刊の頒布と名刺の刷新を同期させられない出発となった。収まりが悪い。
さて、デザインを決めるのがまた難しい。
僕はあまり自分の趣味や性癖(俗用の方)を前面に出すのが好きではない人間だ。デザインしながら、趣味の片鱗が漏れるこれ(=現行3代目のアイコン)にしてもよいのかなとやっぱりうんうん悩みもしたのだが、いよいよ迷っている時間もなくなったので踏み切った。時間切れ。
ちなみにアイコンを蒸奇都市倶楽部のキャラクターや、サークルに寄せたものにしようとは元から考えなかった。作品世界のキャラクターと作者の僕は別ものであるし、ほとんど制作の話をしない僕のアカウントをキャラクターにしてしまうと、彼らに変な色がついてしまうからだ。
アイコンを工芸品にしようかと悩んでいる時も同じように考えていた。僕がなにかつぶやくとその度に品位を貶めてしまうからさ、顔として大きなものは使えないなと。風評被害になるからね。
また、将来的に自分用のサークルにも使えるようにしておきたかったからというのもある。蒸奇都市倶楽部から相反する矢印が示す「シワ屋」というのがそれだ。安直な屋号だがわかりやすさに勝るものはない。名刺もこれ用に作っているし、公開できる Gmail アドレスも新たに取得したので、この記事の公開に合わせてブログのプロフィールも更新しておきます。ちなみに蒸奇からは独立というわけでもないのだけれど、扱い的には業務委託を受けているという感じです。
蒸奇の原稿を多数抱えてそれだけで目が回っている現状、「シワ屋」がいつ始動するのかも不明であるが、いずれかの節ではよろしくお願いします。
作品の発表もそうであるが、下読みとかそういう部分でも何かの役に立てる個人活動をしていきたいと思っています。という宣伝で絞めておく。