第8回テキレボにかかる上京記(2019年3月24日:5日目前半:ケチのラウンジ利用)
3月21日(木、祝)開催の『第8回Text-Revolutions』(以下、テキレボ)に参加するため、20日(水)から24日(日)までの五日間ほど旅の空にいた。21日(2日目)のテキレボそのものについては、蒸奇都市倶楽部の売り子として参加していたので、サークルとして書けることはそちらのイベントレポートに譲る。
一連の上京記を書いているうちに上京から一か月が過ぎてしまった。ようやく最終日。またしても長くなったので前後半に分ける。前半の目玉はラウンジ。
後半
3月24日(日)前半
知る人ぞ知る駅ラウンジ
ラウンジをご存じだろうか。ビジネスクラス以上の利用者や航空会社の上級会員、ゴールドカード保有者などに利用資格が与えられる高級な待合室である。こうしたラウンジは一般に空港にあるものと認知されているが、一部の鉄道駅にも同様のラウンジ(駅ラウンジ)が設けられている。
これらは空港ラウンジ同様に、気軽に利用できるものではなく、鉄道会社発行のカードやクレジットカードの上級会員、近年JRが運行をはじめたクルーズトレイン*1 やそれに準じる列車*2 の利用者に限定されているものが大半だ。
しかし、である。
東京駅には、会員やクルーズトレインの乗客でなくても利用できる駅ラウンジがある。
その名は「ビューゴールドラウンジ」。
JR東日本系のビューゴールドプラスカードや、JALカードSuica CLUB-Aゴールドカードの保有者(および同伴者)が、東京発の新幹線または特急のグリーン車を利用する場合に使える。むろんこれらはカードの上級資格だ。元よりそういう性格のラウンジである。
が、「ビューゴールドラウンジ」を非会員でも使える方法が存在する。
それは『東京発のグランクラスを利用すること』である。
クレジットカードのゴールドクラスやクルーズトレインほどではないにせよ、相応の出費が伴う方法ではある。*3
しかし利用資格の取得は実にたやすい。
というわけで、テキレボに際しての2019年春の上京を、ラウンジとグランクラスの豪華な二本立てで締めくくろうではないか。*4
ラウンジへ入る準備あれこれ
日曜日の朝、雲が一つもない。今日も日中暑くなることを予見させる快晴。絶好の行楽日和ともいえる。
7時ごろに宿を発ち、南千住より東京駅へ向かう。来た際にも書いたが、上野東京ラインのおかげで、上野以北から乗り換えなしで行けるようになったその利便性とありがたみは、大きな荷物を持っているとよくわかる。
東京駅に着くと臨時の特「踊り子」号が停まっていた。結構な乗車率だ。
踊り子といえば185系、185系といえば踊り子というイメージであるが、国鉄末期に登場したこの車両も数年のうちに引退すると見られている。引退や廃止が迫ってから騒ぐのは好きではないので、これを今生の見納めとしておく。
185系の引退と同時期に廃止または特急への格上げが噂されている湘南ライナーの案内。
185系が置き換えられると幕式の行先表示やイラストのヘッドマークも見納めとなる。(昨日の清水トンネルといい、ちょっとした川端康成つながりである。)
行楽への出発時間帯というのもあってか、駅弁屋は大盛況であった。
昨年の駅弁代将軍『海苔のりべん』が欲しかったのだが、入荷時間は11時半ごろ。新幹線の発車時間は10時半。断念せざるを得ない。
その他に食べたいものは「カツ!」という気持ちだったので、代替も兼ねて以下の三つを買い求める。
- まい泉『ごちそう海苔弁当』
これは海苔弁当の変わり、であるがとんかつのまい泉の弁当なので揚げ物も入っている。まい泉のカツサンドは上京した時によく食べる。
- 丸政『丸政のチキンカツ』
*『高原野菜とカツの弁当』のカツのみバージョン。
www.genkikai.org
(※公式には案内なし)
- 日本ばし大増『はしっこカツ』
train-hotel.net
(※『江戸甘味噌カツサンド』の紹介記事)
これらに加えて『万世のカツサンド』にも食指が伸びかけたが、さすがに買いすぎなので控えた。
ラウンジへ
ビューゴールドラウンジは開始から1時間半の利用、または乗車列車の1時間半前から利用可能となっている。
私が乗車する『はくたか559号』は10時32分発なので9時ごろに向かう。
ラウンジは八重洲口の側にある。最寄りの改札は八重洲中央改札だ。場所としては八重洲中央南口の方が近いが、こちらは東海道新幹線の改札なのでグランクラスの利用者とは無縁の改札。
東京駅を利用していつも思うのは、東北・上越・北陸方面の新幹線と駅の構外を出入りする直接の改札がない不便さだ。JR東海とJR東日本の駅の管理境界、施設区分の関係でそうなっているとはいえ、あまり利用者本位でない。少し前に話題になった、東京メトロと都営の壁のようなものに思えてくる。
東日本と東海の経営統合、などとまでは行かなくても、ある程度の利便性のために通路や改札の融通ぐらいはしてほしい気もする。
そういう意味では東海系の施設が多い八重洲口側に、東日本系のビューゴールドラウンジやびゅうプラザがあるのも不思議なものである。とはいっても、グランルーフのあたりは東海道新幹線の高架下(=東海の領域)ではないので、その実不思議でもなんでもないのであるが。蛇足。
八重洲中央口の近くといっても、ちょっと歩く。それに八重洲中央南口も地味な場所にあるので、利用者は他改札に比べて比較的少ない。そのためあたりは全体的に人が少なく、ラウンジもそこにあると知らなければ通り過ぎてしまうだろう。
入る前に一度駅の外に出て外観を見てみる。カーテンで覆われていて中は完全にうかがえない。それにしても9時だというのに日差しが強い。ここ数日の汗ばむ陽気である。
花見客やハイカーなどが各地へ繰り出すのであろう、すぐ近くの東京駅高速バスターミナルで大勢の人がバスを待っていた。
駅に戻り意を決してラウンジへ入る。
丁重に出迎えられ、グランクラスの切符を見せて中へ案内される。
先客は5人ほど、3人のグループと2人の利用者が思い思いにくつろいでいる。
自由なところに座っていいそうなので、窓際の席に陣取る。空いているので1人席のコンセントも自由に使っていいそうだ。早くも至れり尽くせりを実感する。
窓際の机は鉄軌を模している。
カーテンを通した陽光が降り注いでおり、車内の軽い冷房と相まって心地の良い陽だまりを作り出していた。のだが、カーテン越しなのに日の光にあたるとやはり汗ばんでしまう。どれだけ高いんだ気温。
そのサービスは
全ての荷物を向かいの席に置いていると、係の人がおしぼりとドリンクメニューを持ってきてくれる。
ドリンクは全て無料でおかわりは自由*5、安っぽく言えば飲み放題だ。その他にお菓子と、お土産に小さなペットボトル飲料の、りんごジュースかミネラルウォーターをもらえる。
私はりんごジュースを選んだ。
むろんJR東日本系のacureブランド*6 のものだ。東日本管内の自販機でよく見かけるあのりんごジュースである。
提供される飲み物の品ぞろえは以下の通り。(なんでメモに書き写してるんだろう俺、写真撮っておけばよかった。)
ホット
(※)複数のフレーバーより選択可能
アイス
- アイスコーヒー
- アイスカフェラテ
- アイスティー
ソフトドリンク
- オレンジジュース
- 烏龍茶
ミネラルウォーター
朝から何も飲んでいなかったので、とりあえずペリエを注文する。
コップとペリエ瓶が運ばれてきて、なんと一杯目は注いでくれるではないか。しかもライムがついている。ペリエでライム絞るなんて初めてだよ俺。お茶菓子はイチゴチョコブラウニー。
炭酸を飲んで少し落ち着いて、お手洗いへ立つついでにラウンジ内を見学させてもらう。幸いに人が少ないので見る方としてもゆっくりできる。
お手洗いの写真は撮っていないが、広いうえに十分な施設が整っていた。
ラウンジはビジネス利用者のために無線LAN完備。クロークの利用も可能だ。
新聞は五大紙が各2部ずつ。ホテルのフロントでも1部ずつしか置いてないことが多いのに。雑誌は旅行誌が充実していた。また、鉄道駅の施設らしく時刻表や、大人の休日倶楽部やジパング倶楽部*7の会員誌も置いてあった。他に子供向けの絵本もあって、これらも鉄道系のもので統一されているのが「らしい」。
1人席。1人にコンセントが2つ。
複数利用席。空いていれば1人で使っても大丈夫。
私が座った2人席とカーテン。
内装など。組子の模様の名前がわからなかった。
展示物など。午前なので反射と映り込みがすごかった。
一枚目は明治期の時刻表(出典の控え忘れ)。
二枚目は『東京汐留鉄道舘蒸汽車待合之図』(立斎広重/いせ喜・伊勢屋喜三郎/明治6年)。こちらは国立国会図書館のデジタルコレクションでも閲覧できる。
東京汐留鉄道舘蒸汽車待合之図 - 国立国会図書館デジタルコレクション
ペリエの次はスペシャリテコーヒーを頼む。詳しい味はよくわからないが、特別な感じがする。その次はカフェラテとカプチーノ。違いは、たぶんあるんだろうと思う。
それよりこのコップ。ホットだけど透明容器というのが珍しい。ガラス製ではなく、プラスチックのような触感で、二重になっており熱を逃さないようになっている。
さらに口直しとして緑茶を頼む。
と書くと、日頃の貧乏根性やケチの本領発揮で、無料に甘えて自発的に注文をしているようであるが、飲みおわる頃合いに係の人が注文を取りに来てくれるので、むしろおかわりは受動的なものだ。いや、ケチの本領発揮なのは変わらないけれど。
普段は外出したら、お手洗いの頻度が増えるのでコーヒー系飲料は頼まない。しかし今日はずっと列車、それも特急を乗り継いで帰るので、すぐお手洗いに行けるという安心感から安心して頼んだというのもある。
のんびりくつろぎながらこれまでのメモを整理していたら10時が迫っていた。
発車ぎりぎりまで過ごせるが、せっかくグランクラスに乗るのだから列車の入線と、その前の列車を見届けたい。それに久々の北行きの新幹線のホームも味わいたい。
最後にエスプレッソを頼んでぐいと一息に飲み干してラウンジを後にする。
「ビューゴールドラウンジ」は、東京駅からグランクラスに乗るのなら、せっかくの利用資格が生じるのだからぜひ利用してほしい。喧騒に包まれた構内の待合室で過ごすのもいいが、たまにはちょっと高級な場所を使うのも貴重な経験だ。
朱鷺色の翼
さっきから度々グランクラスと書いてあるが、これがそもそもなんなのか、その説明をあえて省いてきた。*8
それは実際に車内に入ってから、後半の冒頭に刻々と記すとして、東日本の新幹線ホームへ10時過ぎに上がる。
ここへ来るたびに、東海道新幹線のに比べて少ないホームでよくやり取りしているものだと感心する。
東海道新幹線ホームと(右)と東北、上越、北陸新幹線ホーム(左)。運行会社が違うので間に擁壁と結構なスペースがある。
乗車する『はくたか559号』は23番線を10時32分に出る。
隣の22番線とともに、この時間帯は上越、北陸新幹線の発着が主であるようで、案内標には新潟、ガーラ湯沢、金沢、長野の文字で埋まっている。
早くホームへ上がったのは、『はくたか559号』の一本前に同じホームから発車する10時16分発の新潟行き『とき315号』を見るためだ。この列車はこれまで北陸新幹線専用であったE7系*9 が、上越新幹線の車両としても走り始めた、その第一陣となる列車である。
上越新幹線で先陣をきるE7系には複数の編成が投入され、そのうちの2編成には他の車両と少し違った装飾が期間限定で施されている。
もしかしたらその編成を見れるかも……という下心もあってやってきた次第だ。
どうやら今回はその下心の通りに事が運んだようだ。
上越新幹線へのE7系デビューを記念した装飾の編成が停まっていた。
特別の装飾といっても、ラッピングのような大掛かりなものではなく、帯の追加とワンポイントが入っている程度のささやかなものだ。
1枚目が装飾付きのE7系。2枚目が通常のE7系。それぞれ同じ部分を撮影。新潟にちなんだ朱鷺色の帯と、稲穂と朱鷺の羽をイメージしたマークが追加されている。
朱鷺の羽をまとった『とき』号が新潟へ向けて発つと、すぐに『はくたか559号』が入ってくる。12分しか折り返し時間がない。慌ただしいことこの上ないが、4線しか使えないので仕方ない。
発車標が北陸(長野)新幹線だけで埋まった。
グランクラスは12号車。東京駅(下り)基準で言うと先頭車。
E7系が並ぶ。左が10時32分発『はくたか559号』。隣は10時24分に先発する金沢行き『かがやき509号』。
隣のホームには10時28分発の盛岡行き『やまびこ161号』。こちらもグランクラス付きの車両(E5系)。
あれこれ撮っているうちに車内清掃が終わり乗れるようになっていた。
車内清掃や座席転換も含めた12分の折り返し時間は本当にぎりぎりの設定で、東京から北へ向かう新幹線では車内で始発駅の雰囲気を楽しむような余裕はない。乗りこんで座席の位置を確認し、荷物を荷棚にあげている間にもう発車ベルが鳴っている。
新幹線は静かに走り出した。
後半へ