雑考閑記

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『聖エセルドレダ女学院の殺人』

聖エセルドレダ女学院の殺人

ジュリー・ベリー、神林美和(訳)/創元推理文庫(2017年)

 

舞台が予期せぬヴィクトリア朝イギリスだったわ。
ビッチさんいいな。こいつとリーダー格が性格的に出番多いしよく動く。

(20170717公開)

 

冒頭、主人公たちの目の前で殺人が起きたときの彼女たちの反応があまりに軽率に見えて、「あ、この軽そうなノリで通されると厳しいかも」と思ったけど、そこをこらえたらずいっと読めた。(人によっては場所はまちまちだろうけれど)7人を最初の二つ名の説明を見ずに覚えられるあたりから面白く読めていけると思う。

僕にとってはそれが、事件が起こった翌日、少女たちが7人という大集団から分かれていくつかの組で行動しだしたあたりだった。ここは彼女たち同士の小さな反目や反発が垣間見えるパートで、「俺いま上手い具合に引き込まれたな」と感じた。

 

キャラクター小説なので彼女たちに親しみや愛着が持てるなら好きになれるんじゃないかな。僕は好きになれた。それぞれの力関係は面白いし、軽口も慣れれば悪くない(最初の死体を前にした反応に目をつむれば。これは後で読み返してもやっぱり軽いという感がぬぐえない)。

 

おそらく殺人事件という重い事態と、彼女たちのコミカル分多めなやり取りとが微妙に噛みあっていないのだろう。人が死なないようなもっと軽い事件が物語の発端ならば、すんなり読めたんじゃないかなあ。

 

各人物の技能や見せ場がはっきりしている点などを見るに、TRPGのリプレイみたいな感じではあったかもしれない。なので、基本未読者をPLにしてセッションをすると面白い展開になるかもしれないと感じた。