雑考閑記

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雑な考えを閑な時に記す

上京余滴『台東区立下町風俗資料館』

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 不忍池の南東、かの上野オークラ劇場の裏側にある。
 かねてより機会があれば行こうと思っていた所だ。

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 その名の通り明治期から昭和中期ごろまでの東京下町の資料を集めた博物館である、まんま。同様の主旨の博物館としては両国の「東京都江戸東京博物館」があるが、*1 今回は交通の関係でこちらに。あちらはまた今度。

 

 さて、僕は明治~戦前昭和は僕の好みである。蒸奇都市倶楽部の作品も概ねこれらの時代をモデルとしている。*2 今回こちらを訪れたのは、今後の描写などに活かせる可能性があるかも、そこまでいかずとも資するところあるかも、という思いからである。そういう意味では半分は趣味、半分は取材といってもよい。

 入場料は300円。*3

 

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 この博物館の大きな特徴はほぼ全ての展示品で撮影が可能なことだ。

 

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 特に入ってすぐにある、下町の長屋を再現した一角を撮影できるのは嬉しい。また展示物も大半は触れるようになっており、これもありがたい。質感や重さなんかは手に取らないとわからないからね。同じように再現された長屋や居間、銭湯の入り口部分は靴を脱いで上がれる。

 

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 大八車と表店。

 

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 鼻緒の店。

 

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 薪と釜と火吹き竹。

 

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 洗い場。ポンプ井戸とたわし、石鹸。石鹸は貝殻の上に置いてある。角のぎざぎざが水切りなんかによかったのだとか。

 

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 板で覆った下水、いやドブ。歩くと軋んだり、べこっ、べこっと音がしたり。*4

 

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 洗濯物と干し柿とほおずき。台東区は浅草の「ほおずき市」で有名。関西ではほとんど聞かない。

 

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 駄菓子屋。

 

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 食器や料理器具、家具に調度品。

 

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 裏路地側。右の手ぬぐいの奥がお手洗い。左の日めくりカレンダーにはさっきの表店の店名が入っていて芸が細かい。

 

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 ふすま。破れや穴を隠す素朴な桜の張り紙もすっかり見なくなった。といっても消えわけではなく、いまはホームセンターなどで壁紙上のもっと手軽で大きなものが売っている。

 

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 居間から表を見る。

 

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 路地裏のお稲荷さん。油揚げがそなえてある。

 

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 銅壷屋。流しではなく、右奥に工房を構えている。

 

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 長火鉢と猫板。前に猫板って書いたら「なんだそれ」と言われた。同じサークル内ですらこれである。

 

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 明かり取り。もちろん木製。

 

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 おみくじ引いたら42番。

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 用意されている。ファイルにはすべての番号の札と読み下しが乗っている。

 

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 路地裏に回り込んで二階へ。

 

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 二階の玩具コーナー。実際に遊べる。途中から海外の団体が来て夢中になっていた。

 

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 十六むさし。実物を見るのは初めて。パックマンみたいなルールの日本のボードゲーム

 

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おにんぎょうさん

 

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そぼくなおにんぎょうさん

 

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 R-1ロボット。もう少しぶれずに撮れないのか。

 

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 クレージーキャッツひかり。『ハナ肇と』が付かない時期は短かったはずだが、これは単に『ハナ肇と』の部分が省かれているケースだろう。昭和40年代なので『ハナ肇とクレージーキャッツ』のはずだ。

 

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 黒で引いた棒線の上、谷啓のサイン部分。

 

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 明治期のめんこ。

 

 

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 この日もっとも興奮した十二階こと凌雲閣の模型。

 

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 見上げる。

 

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 屋上部。

 

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 往時の写真。

 

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 六区のありし日。幟がはためいて賑々しい。

 

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 左の端に「十二階」の表記とイラスト。そのちょっと上に「花やしき」。この場所は半年前の3月に訪れている。

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 そしてもう一つ、個人的に浅草で忘れてはならないのがパノラマ。

 

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 もちろん浅草オペラの案内も。震災で壊滅的な被害を受けその灯火は消えてしまうが、浅草ではレビューやアチャラカなどの軽演劇、女剣劇といった大衆芸能としてつながっていく。

 

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 関東大震災で被害があった地域を示した地図。真ん中の宮城(きゅうじょう)より東(地図の下側)、日本橋一帯からの下町全域が真っ赤に塗られている。不忍池は赤い区域のぎりぎり外側に。しかしそこから荒川(現墨田川)方面、つまり浅草のあたりは真っ赤の中だ。

 

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 1915(大正4)年、震災前の東京市街全図の一部。

 震災前なのであちこちに江戸期以来の水路が張り巡らされているのがわかる。
 三方からの鉄道路線のうち左(南)が東京停車場。新橋から丸の内の現東京駅の位置まで開通している。右(北)が上野駅。線路はさらに南へ延びているがこれは貨物線。秋葉原の貨物駅まで伸びて神田川で水運に接続。上が万世橋駅。現在『mAAch ecute(マーチエキュート) 神田万世橋』はその遺構を活用している。駅前には「軍神」廣瀬中佐と、その部下の杉野兵曹長銅像が立っていた。*5

 

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 張り紙の西郷。

 

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 えらいカビジュアルチックな防空演習ポスター。1942(昭和17)年。

 

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 心臓防護板。

「慰問袋の防護板*6 が俺を守ってくれたぜ」

 

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 明治末ごろのお化粧心得。

 

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 浅草山谷の住居表示が書かれた地図。

 

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 テレビ受像機があるので、蒸奇都市倶楽部のモデルとしては現代に近すぎる。

 

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 興信所の土地別等級表。地価基準みたいなものだろう。

 

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 在りし日の東京点描。

 

 この後の用事が詰まっているので1時間40分ほどで会場を後にした。また機会があれば後の予定を空にして臨みたい。そして写真もぶれていないものとしたい。

 

*1:こちらは台東区立、あちらは都立。「東京江戸~」のほうが扱っている時代区分がほんの少し長い。

*2:といっても今のところ舞台になっているのは、満州の都市をモデルとした繁華街や商業区、高級住宅街がもっぱらだ。「下町」に当たる部分はまだほとんど描写されていないので、違和感があると思う。

*3:年間パスポートは600円=2回分。

*4:いまの金網式のでも音が鳴るよね。

*5:戦後に撤去。

*6:聖書、恋人のお守り、孫からのコイン、形見のペンダントetc