雑考閑記

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雑な考えを閑な時に記す

民営から公営の北神線と神戸市営バス最北のバス停

 先日、神戸へ出た折に神戸市営交通の北神線に乗ってきた記録。 (阪急電車のパタパタを確認したついでの旅。)

ks2384ai.hatenablog.jp

 記録と書いたけれど、例の悪癖によってめちゃ長くなった。

 

 

 

民から公へ

 神戸市営地下鉄北神線は、2020年6月1日に北神急行電鉄から神戸市交通局へ事業譲渡されたことにより、民営から公営に転換した路線だ。

 

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 日本の公共交通機関において、公営からの民営への転換が多い中、上下分離などではない形での民から公への移管は珍しいのではないかと思う。

 そうなった経緯についてはこの記事では触れない。参考だけ掲げておく。

参考1→神戸市:北神急行線の市営化について

参考2→神戸市:北神急行線事業の譲渡譲受にかかる認可について

 

 で、さっそく三宮から乗車。

 

 とはいかない。

 

神戸市バス64系統

 まずは神戸市バスの64系統に乗る。北神急行線のライバル路線だ。

 日中でも約10分~15分間隔で運転されており(北神急行は15分ごと)、北神線と同じくトンネル*1 を走って浜側と山の向こうとの住宅街を結んでいる。

 

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 行先の表示は「神戸北街」となっているが、バス停と車庫の位置関係から実際の終点はその手前の「大原3丁目」止まりである。反対方向はしっかり「神戸北町」始発となる。

 

 で、この64系統と北神線との関係や状況をあれこれ調べて書こうと思っていたが、マイナビニュースに同趣旨のわかりやすい記事があったのでそちらでもって十分だろう。

news.mynavi.jp  

news.mynavi.jp

 

 なにはともあれ車中の人となり、二宮より新神戸トンネルに入る。

 出るまで8分ちょっと。北行きのトンネル延長は7.9kmなのでほぼ時速60㎞で走っていたようだ。

 トンネルを出たバスは直後の箕谷で降りて、ちょっと走って箕谷駅前へ着いた。

 私はここでバスを降りる。

箕谷にて

 箕谷駅は神鉄(しんてつ)こと神戸電鉄の小駅だ。北神線はひとつ隣の谷上駅を終点としている。ちなみに神戸電鉄の運転間隔は日中15分ごと。北神線と間隔をあわせ、谷上駅で北神線とうまく接続する。

 

 小さなロータリーに到着したバスは、私と引き換えに何人かの客を乗せて神戸北町へ向けて走り去った。それでもロータリーにはまだ何人か人が残っている。

 これから私と同じバスに乗るのだろうか。

 そう思っていると、直後に三宮へ向かう64系統の南行きが到着し、みんなこれに乗ってしまった。平日の日中でもそこそこの利用があるようだ。 

 小さなロータリーのバス停に残ったのは私だけだった。

 そりゃそうだよな。

 これから乗る予定のバスはだいたい40分から1時間とまちまちな間隔で走っている。次の便までまだ40分近く。待つのは物好きしかいない。

 今日はここいらの時刻を調べずにやって来ていた。なのでこういうこともままあろう。64系統のひとつ前の便からならば首尾よく乗り継げたようであるが、そう上手くはいかないところが無計画な旅の楽しみでもある。

 

 箕谷の駅はロータリーから南へ伸びる小さな道を少し上ったところにある。

 新開地方面から到着した神鉄の列車ががたごと走りすぎていって少しすると、電車を降りた人が下ってくる。ざっと見て15人ぐらいいる。うち半分は学生だが、駅の規模にしては多い。5人ほどがロータリーを横切って方々へ散っていく。残りはバス停で立ち止まりスマホで時間を潰しだす。のもつかの間、すぐに北行きの64系統がやって来てみんな吸い込まれていった。バスから降りる人は誰もいない。

 

 箕谷駅は神鉄と64系統との乗り継ぎ場所としての役目も持っているようだ。ここで乗り換える人は鈴蘭台あたりからやってくるのだろう。続いてやってきた南行きのバスの車内は満席で立ち客が出ていた。さすがは黒字とされる路線。一日の運行本数第三位(神戸市バス:平成30年度)、営業係数*2 88は伊達ではない。(参考:神戸市:市バス路線別経営状況「平成30年度路線別経営状況」)

 

 さて、ただじっと待っているのもなんなので待ち時間を利用して少し歩く。

 線路沿いに新神戸トンネルの方へ向かうと小さな広場があった。雑草が茂りはじめた広場では、植木鉢で構成された三体のロボットらしきものが無言で迎えてくれた。かわいくない?

 

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 喋れぬ彼らの後ろの看板がこの場所を教えてくれる。

 なになに?

 

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 おお、ここは新神戸トンネル坑門直上に位置する広場なのだ。

 

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 足元、空を飛ぶ彼らの下を車が出入りしている。

 

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 ちなみに Google マップでは「名も無き広場」と名付けられていた。なにそれかっこいい。

 北東すぐ近くには「名もない公園」がある。なんじゃそりゃ。*3

 

 

 広場の背後で踏切が鳴り、やがて新開地方面からの電車が通り過ぎていく。

 バスを降りてから二本目の電車なので箕谷駅前へ歩きはじめる。

 神鉄は15分毎なので、二本目で約30分経過したことになる。移動時間を考えると目的のバスにいい感じで間に合うだろう。

 

神戸市バス111系統~最北のバス停~

 箕谷駅前バス停のロータリ-に戻ってほどなくして、この神戸行きの主目的のひとつ、神戸市営バス111系統がやってきた。神戸市北区の山田地区を経て、衝原(つくはら)という地へ向かう系統だ。神戸市の北区に散らばる新興住宅地を通らずに、昔ながらの集落を縫って走る路線でもある。

 そのことは僕も乗り終えるまで知らなかった。

 

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 そもそもこの路線に乗りたいと思った動機は、衝原というバス停の位置にある。

 僕は地図を読むのも好きなのであるが、その時ふと目にとまったのが衝原という地だった。そこに神戸市営バスのバス停があるという。そして他の神戸市営バスのバス停と位置を比べて思ったのだ。 

 

 衝原って(神戸市営バス)最北のバス停では?

 

 ざっくりと座標を調べるとどうもそうらしい。

 なら行ってみるしかないだろう。最北のバス停へ。

 他の用事との兼ね合いで関西へ出る予定もあったので都合がよかった。

 

 そんなわけで私は111系統が主な起点とする箕谷駅前から車中の人となった。

 僕の他の客は3人。

 

 神戸市の広大さはよく知っている。ことに北区と西区には「神戸市」と聞いても想像できないような集落が多くあるのも心得ていたつもりだ。

 しかしそういった場所を神戸市営バスが走るのは知らなかった。てっきり市バスは浜側、山側の町々や鉄道駅と、山々を切り拓いて作られた新興住宅地をばかり結ぶものと思っていたのだ。

 111系統は神戸市営バスの中では異色だった。

 

 バスは志染川沿いを下っていく。ちなみにこの川は六甲山地の北に端を発するが、その険に阻まれて神戸市街に出られず、六甲山地を東へ迂回するような流路を経て加古川に注ぐ。

 箕谷を出ておよそ5分後にこれまで走ってきた国道428号*5 を捨てて、小さな道へ入り込む。事前に頭に叩き込んでいた地図から推測するに、志染川沿いの集落を結ぶ旧道らしい。現在の道は集落の散らばりを気にせず伸びている。

 少し走ると北へ向かうべく曲がった国道を越えて、兵庫県道85号神戸加東線の旧道らしき区間に入る。

 

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 ここ、神戸市。

 

 行き交う車はまったくなく、バスは悠々と走る。

 それぞれの集落にあるバス停で一人ずつ降りて、最終的に客は僕だけになった。

 

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 ここ、神戸市。

 

 折しも田植えの季節、すでに稲が植えられた田、いままさに植えられる田、まだ水だけが張られた田が混在していた。とてもよい農村的な風景だ。

 もっともこんな区間を走るものだから赤字路線で、さきに示した『神戸市:市バス路線別経営状況「平成30年度路線別経営状況」』による営業係数は529、つまり100円稼ぐのに529円かかる。表中では46系統の営業係数809に次ぐ第二位である。しかしこの45系統は今年の3月末に廃止されている(神戸市:市バス路線の廃止)。つまりこの111系統は現在……。

 

 止めよう、そんな話は。

 私はただの趣味人でしかない。

 公共交通機関は地元の人のものだ。しかし利用が少なすぎて廃されるのはやむを得ない側面もあろう。公営であればなおのこと、大きい赤字が税金を圧迫するのであれば、他の納税者の負担になってしまうだろうから。

 

 いや、その話も止めよう。

 俺はただ乗りに来ただけだ。

 

 集落を抜けて県道と合流して少し走ると、左右から山がぐっと迫ってくる。これまで走ってきた谷に別れを告げる。そして山に分け入ってすぐにある集落が衝原だ。バスはここで終点となる。

 

 バスはしばらくの折り返し時間を経た後、箕谷駅前となって戻っていった。

 ここまで約20分。次のバスまでおよそ40分。

 そこから考えるに日中は一本のバスがピストン運行しているらしい。

 

 ともあれ神戸市営バス最北となる衝原のバス停である。

 

衝原~沈んだ集落~

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 ここ、神戸市北区の山田町衝原。

 

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 広い転回場。

 

 隅にぽつんと佇むパスポール。

 

 さらに隅にある便所らしき小屋。

 

 転回場(地)につき立ち入り禁止の看板と運行事業者名。

 

 素晴らしいまでのバス折り返し地点である。

 たまらない。

 

 県道はまっすぐ三木方面へ続いている。志染川に沿って山間の湖沿いへ伸びる県道を、バイカーが軽快にすっ飛ばしていき、トラックも結構な速度でびゅんびゅん走っていく。

 バス停の遠景を撮るために車道を渡ったが、こんな場所に歩道はない。

 目の前を車が猛スピードで通る。雑草が生える路肩での撮影は少し怖かった。

 

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  湖――衝原は湖畔にある集落だ。

 もっともつくはら湖は人造湖、いわゆるダム湖である。志染川を堰き止める呑吐(どんと)ダムによって生じた貯水池だ。

 

 瀬戸内海沿いの播磨は雨が少なく、水不足に悩まされてきた歴史がある。

 

 ため池が日本一多いのは兵庫県だといえばそれが少しでも伝わるだろうか。いや、兵庫は面積が大きい(12位)からな。お隣の大阪や香川(面積はそれぞれ46位、47位ながらもため池の数は5位と3位)の方が密度別では勝るんじゃないのか。

 

 調べるとどうやらそうらしい。

 

 総面積に対するため池の密度では香川、大阪、兵庫の順になる。

 しかし兵庫のため池はそのほとんどが淡路島と播磨、つまり瀬戸内海側に集中しているのも事実で、この地域に限ったデータはないようだが、ざっくり調べると『水田面積に対するため池の割合が日本一』ともいう。

 いずせによため池の数が多く、水不足に悩んできたのは事実。

 ここからそう遠くない位置には淡河疎水、山田川疎水といった戦前に作られた農業用水確保のための苦労が残されている。御坂サイフォンはじめ、これら疎水を通すために作られた水路橋も多く、こんな場所にこんなものが、と驚くに値する遺産も多い。

 

御坂サイフォンを設計したパーマー:農林水産省

御坂サイフォン | 土木学会 選奨土木遺産

 

 ともあれ肝心のつくはら湖である。その湖底には旧衝原の集落が沈んでいる。

 

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 バス停のすぐ横にある大歳神社も旧集落から移ってきたものだ。

 もうひとつ旧集落から移ってきたのがバス停にかっこ書きされていた「箱木千年家」。日本最古とされる民家で重文に指定されている。

 

 しかし今回の訪問目的ではなかったので足は運ばなかった。

 次のバスまで近くを歩こう。

 県道563号神出山田自転車道線(サイクリングロード)を進み志染川を渡る。

 

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 それぞれ橋の上から上流と下流を写す。

 二枚目の突き当たりからダム湖になっている。

 そのためか川原は完全に護岸されていて風情はない。しかし釣り人というものはどこにでもたくましく入り込む人種で、どこからか河原や湖畔に入り込んで糸を垂らしていた。

 

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 サイクリングロード沿いにもう少し進んで振り返る。

 うぐいすがさえずる良い場所だ。もう少し涼しければ言うことはない。

 湖畔に植えられているのは桜だろうか。

 初夏の葉桜が目にまばゆ

 

 ……あ、嫌な感じがする。

 

 足元を見るといた。

 

 毛虫がたくさん。車や自転車に潰されたのもいる。

 赤っぽいやつだ。

 ひええ、ドクガじゃないですかね。

 この日に着ていたのは半袖。

 いや、毒のあるなしに関係なく見たくない触れたくない。

 そそくさと退散した。

 

 次のバスまでまだ20分ほど時間があった。

 かなりの気温で汗ばむので動き回らず過ごす。

 

111系統~谷上駅への延伸~

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 バス停には北神線の移管に伴うダイヤ改正のお知らせが。

 市営化最大の目玉は北神線の運賃値下げだ。

 それは最初に掲げた写真の売り文句にも書いてある。

 

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 550円からほぼ半額の280円へ。

 280円というのは神戸市営地下鉄の3区料金に値し、北神線営業キロ7.5kmもこの3区に当てはまる。しかし運賃表を見ると北神線区間は3区を当てはめず、「北」という区分になっている(神戸市:地下鉄料金表)。

 

 いろいろな理由があるのだろうが、その一つがバス停の掲示に示されていた。

 

 先の画像の下の方に、神戸北町~三宮の料金が書かれている。

 上段、新設の62系統を使って谷上駅で乗り換えると220円+280円で500円。

 下段、僕が先に乗った64系統による直通も500円。

 

 つまり市営化後の「北」区分というのは、北神線のライバルとなる64系統を使わなくても同額になるのを狙って設定された部分もあるのだろう。またこの同額というのは、朝夕ラッシュ時の新神戸トンネルや三宮付近の渋滞に巻き込まれ、遅延する64系統を避ける客を目当てにした設定でもあろう。

 市営化によって64系統と北神線を一体的にあつかえるようになった神戸市交通局の施策として、北神線と64系統への乗客分散を狙っているのかもしれない。まあ僕の妄想だけど。

 

 やってきた111系統は箕谷駅前を越えて谷上駅まで足を伸ばす便だった。この系統の箕谷駅前~谷上駅は北神線の移管によって延伸された区間だ。上のお知らせにもある通り。しかし延伸便は本数が少なく、要約すると運が良い。

 

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 ちなみにやってきたバスの運転手さんは僕が衝原まで乗ってきた便と同じ人だった。箕谷駅前までの所要時間を考えるとピストン運行しているのは確定だ。

 ん? となるとこの延伸のからくりはおそらく……、いや、それは終点まで乗ればわかる。

 

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 衝原にて折り返し待ちの神戸市バス111系統。

 絵になる光景だ。

 

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 車内にもしっかりと市営化のお知らせがある。

 谷上駅へ向かうようになった111系統も一応は市営化の恩恵を受ける。

 

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 車内は6年前の路線図。

 これは111系統が時間の流れから切り離されているから。

 ではないようだ。この日に乗った他の営業所の車両の路線図も2014年で時が止まっていた。

 

 衝原を後にしたバスは志染川を下っていき、旧山田町の集落を抜けて箕谷駅前へ着いた。

 箕谷駅前のバス停では、すぐ後ろに111系統の衝原行きが控えていた。発車時刻が詰まっているのだろう。

 やはりそうか。

 延伸のからくりは想像した通りだった。

 谷上延伸は車両取り替えと乗務員交代のついでに設定されたものなのだ。おそらくダイヤ改正前は箕谷駅前に着いた便は回送となり、入れ替わりに回送でやってきた車両が新しい111系統になっていたのだろう。で、そのダイヤというか、乗務員の行路は改正後も変わっていない。だから延伸された谷上駅行きは本数も少なく、時間帯もばらばらなのだろう。そこに客の動向はあまり含まれていない。

 もっとデータが集まれば実績に応じたダイヤに改められるとは思うが……。

 

 箕谷駅前からおばあさんが乗ってきた。しかし運転手さんは「このバスは谷上行きですよ。山田の方には行きませんよ、衝原行きは後ろのバスですよ。これで大丈夫ですか?」と何度も確認する。するとおばあさん、「なんや、間違えたわ」と降りていく。

 同系統のバスが起終点で同時に行き交うから間違えてしまったのだろう。

 

 途中、山田町の区間で乗り降りした人が何人かいたが、途中からも含めて終点まで乗り通したのは僕だけだった。

 僕を降ろしたバスは案の定回送となって谷上駅前のロータリーを出て行った。

 

谷上駅~市交通局の管轄となった駅~

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 谷上駅を眺める。右の表示はすでに「神戸市営地下鉄」に。

 

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 ほんの数日前までは「北神急行」と掲げられていた名残りが。

 

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 陽光を受けた文字がかすかに光を反射している。

 取り換えられてまだ日が浅い証拠だ。

 

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 ずっと掲示されている「谷上駅」と見比べるとよくわかる。

 風雨でくすんでしまった「谷上駅」と光を反射する「神戸市営地下鉄」。

 

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 構内には特設窓口が。各種定期券も安くなることによる措置だ。

 

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 前後するが運賃表。谷上駅以下、反転したL字状の白い部分が市営化によって新たに貼付された部分だと思われる。

 

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 ホームは広い。

 左が北神線、右が神鉄の乗り場だ。

 ホームがいやに広いのは乗り場をひとつ潰して拡幅したからだ。

 写真中央の銀色の線が旧ホームと拡幅ホームの接続部だ。拡幅前は接続部の左側、つまり画面左側に神鉄線の線路が敷かれており(接続部より右のホームを使用)、北神急行線(当時)と対面での乗り換えはできなず、キセル防止のために中間改札も設けられていた。

 現在では中間改札も廃止され、ホーム下のコンコースはだだっ広い面積を持て余している。ちなみに会社別の改札であった名残りとして改札も切符売り場を隔てて二つに分かれている。もちろんどちらを通っても同じ場所に出られる。

 

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 発車時刻は互いに近接しており、日中は対面で乗り換えられるよう工夫されている。箕谷駅の項でも書いたように、両線とも15分間隔でサイクルがあっているがゆえの上手い方法である。

 

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 やってきたのは1000形。地下鉄が開業した77年から走っている系列だ。もっともこの1107編成は81年製造の二次車の第一陣である。

 しかしいずれにせよ1000形は新型車6000形の投入により消えていく車両だ。それどころか6000形北神線を走る全ての車両を置き換え対象に含んでいるので、いま走っている緑をまとう車両系列(2000形、3000形)はすべて消えてしまう運命にある。

 

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 ヘッドマークの車両が新型。

 右の白い花は鈴蘭。北区の住宅街、鈴蘭台の由来である。その鈴蘭台の名は戦前の公募で避暑地にふさわしい名として選ばれたというが、ネット上を調べただけでは本当のところはよくわからなかった。歴史が古いのは確かなようである。鈴蘭は北区の花であるが、その公募と制定は86年と最近だし、これは明らかに先行する地名の鈴蘭台に由来している。もうひとつ明らかなのは、神戸市営地下鉄鈴蘭台を通らないということだ。

 しかし谷上駅は北区にあり、このたびの市営化によって神戸市営地下鉄は初めて北区に路線と駅をもつことになった。そして北区の花は鈴蘭と菊(栽培の中心地が山田地区であることに由来して制定。)である。菊はお祝い事にはあまり用いられない*6。よって鈴蘭の採用なのであろう、邪推するに。

 

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 反対側のヘッドマークを飾るのは市営地下鉄イメージキャラクター「ゆうちゃん」と北神急行電鉄のPRキャラクター「北神弓子」(きたかみ きゅうこ)。

 この北神弓子という子はちょくちょくヘッドマークやグッズ、ポスターなんかに登場する。京都市営交通でいうところの太秦萌ちゃん的な子*7。件の北神急行は市営化されたが、彼女は引き続き地下鉄北神線のPRキャラクターとして活動するようだ。よかったね。

参考:神戸市:マスコットキャラクターの使用ガイドライン(下の方にキャラクター紹介)

 

市営地下鉄北神線に乗る

 何本か見送ってから市営となった北神線に乗る。

 谷上を出た列車はすぐ北神トンネルに入る。事業者は変わったが設備が変わったわけではないので、以前と同じままだ。違う点があるとすればトンネル区間でも窓が開けられていて、ごうごうとうるさいぐらいだ。昨今のコロナ情勢を踏まえての換気措置で市営化とは何の関係もない。

 

 新神戸まで約8分。

 トンネル区間の所要時間はライバル64系統とほぼ同じだ。箕谷駅前と谷上駅という違いはあるものの、両線とも三宮までの区間を含めても同程度だろう。そのうえ、どちらを経由しても神戸北町との行き来では500円。

 こうなると北神線の強みやはり鉄道ゆえの定時性ということになろうか。

 対する64系統の強みは三宮と住宅街の直通とラッシュ時の本数にある。

 

 一長一短。

 

 ここから邪推するに、神戸市交通局が移管に伴うダイヤ改正で黒字の64系統を大きく弄らず、谷上駅発着の62系統の新設ならびに従来の系統の延伸(どちらも本数がきわめて少ない)という消極的な方策を採ったのは、値下げした北神線や同額になる64系統の動向を見定めるためではないかと思う。

 まあ僕が妄想してもなんにもならない。こういう試算はお役所が得意とするところなので、適当に話を打ち切っておく。

 

 地下鉄は新神戸より先は神戸市街山の手の地下を走り、須磨区妙法寺駅まで地上に顔を出すことはない。その妙法寺駅は浜側から見ると山の向こう側にある、前後をトンネルに挟まれた駅で、北区の新興住宅地と同じように山を切り開かれて作られた団地やニュータウンに埋もれている。そこから先は終点の西神中央駅まで、ずっとニュータウンがある台地(尾根筋かな?)とほとんど開発されていない谷を貫いて走る。

 

 僕はこの後に大阪で用事があるので新神戸駅で下車した。

 が、まだ少し時間があるので寄り道をしていく。

 

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 北神線の起点となる新神戸駅、これでもかというほど市営化をアピール。

 

神戸市バス2系統~たぶんドル箱路線~

 地上に出てすぐ目の前にある布引バス停から乗るのは市バスの2系統。三宮と阪急の六甲とを山麓を経由して結ぶ路線だ。本数はこれまで乗ってきた路線の比ではなく、平日土休日を問わず日中でも5~6分間隔でやってくる恐ろしい頻発具合。ちょっとでも詰まると続行当たり前。しかも三宮で観察する限り、ほぼ全便が立ち客上等で発車していく。

 

 この2系統はもちろん黒字路線で、先の「平成30年度路線別経営状況」によれば一日の乗車人数17924人(二位:10520人)、運行本数366本(二位:289本)とぶっちぎりの一位である。営業係数は89で、これより効率的に稼げている路線はいくつかあるもの、それでも市バスの中ではよい数字を残している。

 

 データ的なともかくこのバスは新神戸を出てからしばらく山の麓を走るため、とこどころで見晴らしのよい区間がある。

 

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 山と住宅地、海が近い都会の港町らしい光景。

 海の向こうの山々は大阪府和歌山県を隔てる和泉山脈

 

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 いかにも港町という一枚。

 

 今回のメインはパタパタの撮影で、そっちにカメラの容量を回した関係であまり写真を撮っていない。バッテリーに余裕があればもっと納めたかったが、他の都合との兼用なので節約した結果だ。

 これらの地にはいずれ再訪したい。

 

 

参考サイトと記事

本文中に示していない参考、参照元を挙げる。先人の調査に感謝する。

 

衝原について

衝原(北神戸・丹生山田)

 

箱木千年家について

神戸新聞NEXT|連載・特集|北マンスリー|現存する日本最古の民家 神戸市北区の「箱木千年家」

 

ため池について

日本一のため池地帯 | ごはん塾の本棚

ため池について - データ|かがわの農業農村整備

土木学会図書館|旧蔵写真館 9.淡河川疏水工事

 

鈴蘭台について

crd.ndl.go.jp

 

*1:車道は新神戸トンネル、鉄道は北神トンネル

*2:100円の収入を得るための費用。

*3:もちろん管理上ではしっかりした名前があるのだろう。

*4:この写真は終点の衝原に着いてから撮ったもの。撮影時、僕がカメラを構えているのを見た運転手さんが表示の切り替えを待っていてくれた。ありがとうございました。

*5:この国道428号をほぼトレースする神姫バスの三宮~吉川の路線(路線名不明)も良い。また乗る機会があれば紹介したい。

*6:皇室(恐れ多い)や、仏花(葬儀など)のイメージが強すぎるようだ。

*7:というか太秦萌を参考にして生まれたキャラクター