雑考閑記

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雑な考えを閑な時に記す

春先の淡路島(後編)

  淡路島に行った記録の後半。

 

 

島に来た理由

 記念館を出たのは16時半ごろ。

 次のバスを待たず海岸に出てまっすぐ北へ歩きはじめる。帰りのバスの時間まで海岸沿いを歩いて北上しながら、どこか適当な地で夕日を見る。

 

 そもそも旅の発端が「海に沈む夕日が見たい!」という思いつきだ。

 僕の住んでいるところは山の中なので、ときどき無性に西の海に没する太陽を見たくなる。これまでの旅では様々な場所に沈む夕日を見てきたが、淡路島からはまだ見ていなかった。というわけで、遠いとも近いとも言い切れない距離にある淡路島へ旅立ったのが事の次第。

 この時期にしたのは、冬の内に夕日を見ておきたかったからだ。

 住まいと交通手段の関係で遅いと日帰りができなくなってしまうので、淡路島で夕日を見るのならば18時までに日が沈む2月末あたりが期限であった。

 16時、17時台に沈む真冬に来られれば一番よかったのだが、まあ、僕にもいろいろと都合がある。

 

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 蟇浦(ひきのうら)集落にある公園では早くも椿が散っていた。

 

島の西は夕日が良い

 淡路島の西海岸、特に「淡路島サンセットライン」と呼ばれる県道31号線沿いは基本的にどこでも日没が眺められる。やや北寄りの富島(震災記念公園のすぐ南の地区)や室津からの眺めが特に良いそうだが、あまり本州や四国に寄りすぎないならば、サンセットラインはほぼ全域で播磨灘が南北に開けているので全季節で夕日が眺められるのではないだろうか。

 

 サンセットラインを北上して冬の終わりの夕日を眺めようという主旨の今回であるが、空模様はあいにくの曇り。曇りのち晴れという予報も出ていたが、わずかに雲間から日が顔をのぞかせるぐらいで基本は曇天だ。

 

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 海は輝いているものの、太陽は見えない。

 

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 それほど遠くない本州側もかすんだまま。

 

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 それでも日没は見えるさと楽観的に北上する。

 

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 ちなみに西海岸の北側は海の近くまで山が迫っている。

 高台の上に民家やガードレールの白が見える。

 

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 そりゃ棚田になるよね、という地形。

 

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 山と海に挟まれた土地を道路が貫いている。日本の海岸沿いでよくみられる風景だ。当然ながら歩道はない。もっともここは二車線で消波ブロックがそこそこあるので、島南東部の諭鶴羽山地の海岸沿いに比べれば広い方。あっち側は本当に山にへばりついているという表現があっている。幸いどっちも車の本数はそれほど多くはない。

 ちょくちょくロードバイク乗りが私を追い抜いていく。夕暮れ時だから帰途についているのだろう。ジェノバラインでは自転車も航送できる。

 

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 お、奇跡的に太陽がのぞいてくれている。

 俺はここだ!

 沈むときには顔をもっと見せておくれ。

 乱反射を俺に届けてくれ!

 

 平林のバス停に到着したのは17時20分ごろ。ここでの次のバスは17時50分。

 まだまだ明るいが、日没の時間(神戸で17時40分ごろ)と歩く速度、バスの時間を考慮するとここらの海岸で日没を見てバスを待つのがちょうどよい。

 

f:id:KS-2384ai:20200216231114j:plain バス停の近くには古代の製塩遺跡があった。

 

f:id:KS-2384ai:20200216231120j:plain モニュメントが置かれている。

 

とても良い木です

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 ちょっとした空き地に木が一本生えていた。

 立地はもとより、枝ぶりも素敵で、絵になりそうないい感じである。

 

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 これ、曇っていてもこんなに雰囲気があるのならば、太陽が出ていたら影やら西日やらでもっとすごい良い感じになるんじゃないか?

 うーん、これは次の冬にはぜひ足を運ばなくてはならないな。

 

肝心の夕日は

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 平林は集落があることからもわかるようにちょっと開けた土地で、海岸と呼べるものがあって階段で降りられる。(狭い場所だと上の写真みたいに消波ブロックがあるだけで、降りられはするけれど、防波堤が高いので道路に戻れなくなる。)

 

 天候は……。

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f:id:KS-2384ai:20200216231153j:plain ちょっとした雲間に薄い茜っぽいのが見えるのみ。

 時間的にはとっくに日没だが……。

 

 成果:やっぱり見られませんでした。

 

 駄目元で行っていたので仕方ないと受け入れる。

 ただ、とても良い木を見つけられたので、いずれ必ず再訪すると心に誓う。

 

帰ろう、本州に

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 バスの時間も近いし直に暗くなる。帰ろう。

 

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 バスベイにある建物。いかにもな地方のバスの待合所だ。

 

f:id:KS-2384ai:20200216231210j:plain 中には町内会の掲示板。使われなくなって久しいのだろう。

 

 やってきたバスは行きに乗ったのと同じ運転手さんだった。私一人を乗せた車内にかすかにラジオが響く。

 島を北上する間にも見る見るうちに空が暗くなっていく。淡路島の北端近く、松帆の浦に着くころにはすっかり暗くなっていた。松帆の浦は藤原定家の『来ぬ人を まつほの浦の 夕なぎに 焼くや藻塩の 身もこがれつつ』の「まつほの浦」。

公共の交通

 終点となる岩屋ポートターミナルまで結局誰も乗ってこなかった。

 廃止代替のコミュニティバスとはいえやはり寂しいものがあるが、元の路線が廃止となったのもむべなるかな。とても民営ではやっていけないだろう。*1

 いくら公共の交通といっても、赤字では存続できない。黒字路線の利益を入れてまで路線を存続させるのがよいのか。公営ならば税金を入れるのか。廃止する民営路線を自治体が引き継ぐのかどうか。地域住民(≒国民)がそれをどう考えるか。

 日本はとっくに路線の本数削減や路線の再編、廃止がよく行われる時代になっている。廃止代替で走り始めたコミュニティバスさえ廃止された地域だってある。*2

 

 自治体レベルではなく全国レベルで公共交通の在り方をデザインしなおさなければならない。そんな時代だとふと思った。新幹線ばっかりじゃなくて。

 まあ、流しの旅人の戯言である。

 

夜の商店街

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 夜の絵島。ライトアップされていた。

 

 帰りの船まで少し時間があるので岩屋を再びぶらぶら。

 

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 岩屋商店街。

 

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 18時過ぎなのに、休日ということを差し引いても店はほとんど閉まっており、人通りもめったにない。わずかに開いた飲み屋とスーパーと銭湯の灯りがまばゆい。

 明石からの最終便が23時40分なので、そっちで飲んでくる人もいるのだろう。

 

島を発つ

 滞在時間はほんの6時間ほど。短いものだ。本当にふらりと立ち寄っただけといってよい。しかし見るもの、得られたものは多かった。

 

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 明石海峡大橋メインケーブルのライトアップ。

 

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 夜の橋をくぐったところでバッテリー切れ。

 

振り返って

 今回は中核に「夕日」と「野島断層記念館」を組み込んでいたので、時間も必然それに制約を受けたものの、いろいろと景観の良いところも発見できたので、いずれ再訪したい。

 また、淡路島には今回発見できた場所のみならず、沼島(淡路島経由でしか行けない)をはじめ他にも訪れたい地がある。じっくりめぐるなら泊まりか、何度か挑戦するか、いずれにせよまた気が向けば計画を立てたい。

 その時には必ず公共交通を利用する。これは決定事項。

 

記事の前編はこちら

ks2384ai.hatenablog.jp

野島断層保存館の記事はこちら

 

ks2384ai.hatenablog.jp

 

*1:もしかしたら他の便は満員かもしれないけれど、僕が見た限りこの日のコミュニティバス各路線はがらがらだった。

*2:大概の場合は完全に足が途絶えないよう代替でデマンドタクシーなどを走らせたりする。廃止代替の廃止代替である。