雑考閑記

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雑な考えを閑な時に記す

『ジェフリー=クロウズ・シリーズ』

1:ファントム・ペイン
2:ギルティ
3:Dear My Master
青銭兵六/POINT-ZERO(2011)

 

ハードボイルド調探偵小説、との由。やや抜けたところがありながらも、決めるところはきっちり決める男の物語。
全13話のうち、気に入ったものに簡単な感想。

(20170715公開)

第6話「ボン・ボヤージュ」
作者は「出来の悪い部類」(あとがき)としているけれども、僕は結構好きだねえ。
凄腕スナイパー。狙われる御曹司。その交錯と物語の落としどころも含めて、そう絡んでいくのかと。将来に希望を持てるような終わり方もよい。

第8話「エンジェリック・ヴォイス」
夢と現実。自由と束縛。いくらか演出されたものであっても、それを受け取る人間の感動そのものは、演出されたものではない。これもオチが良かったし、そこに至るまでの主人公とゲストとのやり取りも良かったなと感じる。

第9話「墓場デ唄ウ女」
マリア絡みの話では一番好き。特に読書のシーンはシリーズ内で最も人間臭さを感じられた。
謎であるアンドロイドが消えた理由はすぐに読める。けれど、実際のシーンで台詞の応酬による肉づけは予想以上で、作者が描写にしっかりと力を入れ、作品に血肉を注いでいるのを感じ取れた。

第10話「ノー・スウェット」
敵役(?)のコミカルさもいいですよね。それもあってか、シリーズ随一ののんびりした話しという印象。でも最後はやっぱりいい感じで締めてくれます。オチもちょっとコミカルだけど。

第11話「子供ノ情景」
「一番の異色作」(あとがき)。読んだらわかる。確かに毛色が違う。
単純な好みとして、僕はこういうのがかなり好きで、シリーズでは一番かも。
それとは別に、分かりやすい悪(というよりは不正義かな)と対峙する、徹底的にハードな主人公の態度というものがはっきり出ており、そういう面も備えてこそ、やっぱり登場人物の造形や人間性に立体感が増すのではないだろうかと思う。
そういう点でもシリーズに欠かせない話では、と感じた次第。

第12話「クロス・ロード」
戦闘ではめっぽう強いのに、それ以外では主人公に振り回されがちな教官殿いいね。

全般的に落としどころ(オチ)の持って生き方、描き方が上手いなあと感じた。ただそれだけに、13話(最終話)ラストは、マリアの方のセリフでぐっと締めてほしかったかな、という気がします。