雑考閑記

雑考閑記

雑な考えを閑な時に記す

『親友を殺した奴を探している』

親友を殺した奴を探している

姫神雛稀/春夏冬(2017)

 

(20170715公開)

輪の中心のようなものが欠けてしまい、そこで刻が止まっていた人たちが、ふとした契機で時を動かし始めようとする話。止まっていた? 意図的に止めていたのかもしれない。最後の部分でピースがはまり、そこから再出発なのかなと思ったり。

作中「時間が止まってしまう気がする」(82p)とあるが、僕はむしろ、作中開始時点の方が時間が止まっていたのではないかと読んだ。
それは彼らが死を受け入れきれていない部分があると取れたからだ。自殺だとされたけど、本当は殺されたと信じている部分であったり、もっと精神的な面で、5人いた輝かしい時代を懐かしんだり、そうした部分から嗅ぎ取ったものでしかないけれど。
(作中では親友の死を追うのはテーマだから回想が多いのかもしれないけれど、多分この人たち4人が集まった時は、ふとした折にやっぱり5人いた時代を懐かしんでしまうんじゃないかと思う)
タイトルから想像される犯人の捜索というよりは、彼ら自身の再出発のための追懐と現状認識という部分が強い。

人物の設定に含みがありそうなところもあるし、他の視点でも見たいなと思ったり。
性自認について、サイジョー達のグループでは大した問題ではなかったようだけれど、作中ではそれが原因で当人が殺されてしまったわけだしで、そこいらの点について各員どう感じているのかも気になるかな。
その件に限らず、澱のように消化しきれなかった事にケリがついて、否応でも捉え直さなくてはならなくなったんではないだろうか。それを上手く昇華できるかどうか、そこが彼らとサイジョーの本当の関係の示しどころかもしれない。
(この作品ではそこが主眼ではないので、解決後についての各自の反応は不明だ。それでいいと思う。なのでこの段に書いてあることは単に僕の興味である)

節単位で視点が変わる部分があるので最初ちょっと混乱したけど、枠と網掛け表示の意味に気付いてすっきり。