雑考閑記

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雑な考えを閑な時に記す

それでも上京したやつの話(2019年10月14日:4日目:それでも寄り道する)

 イベントはなくなったのに東京へ行った男の話の4日目。

 

10月14日(月、祝)雨(夜の外出時のみ確認)

 

 

 

閑人台風卵焼き

  前日から友人宅に泊まり。買ってきた土産を食べつつだらだらと議論したり遊ぶなどしたり、ずいぶんくつろがせてもらった。(みんな好んで酒は飲まないので安上がりでよい。)
 10月14日は鉄道の日であるから鉄道博物館鉄博)に行く案もあったが、腰が根を張っていたのでそのまま過ごす。鉄博はまたの機会にする。実は一度も行ったことがない。

 だいたい僕は見るよりも乗るのが好きな人間であるからあまり足が向かない。京都や名古屋も同じ理由で行ったことがない。行ったら行ったであっという間に時間が過ぎていくのであろうが。

 

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 金箔入り珈琲、羽二重餅、扇屋の玉子焼き。
 左ふたつは金沢で買ったもの。羽二重餅は福井のものだけど、金沢でも数種類あった。

 僕は羽二重餅が好きだ。というか餅(求肥)系全般が好きである。すあま然りボンタンアメ(兵六餅)然り朝鮮飴然り、具が入っていないのがよい。

 

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 玉子焼き

 

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 断面

 一折でそこそこの量があり、三人で軽食とするに充分であった。
 関東なので砂糖が効いた甘い味付けである。関西育ちなので甘い玉子焼きというだけでもう珍しい。そういった味付けや断面的に、てっきりだしまきかと見まごう。

 甘いのでお供のコーヒーが合う良い組み合わせだった。美味しい。

台風の被害

 夕方になって友人のパソコンを使わせてもらう。
 台風が去って二日、交通機関の最新情報を収集するためだ。2日目に書いたように、僕は外でインターネットが使えない。テレビから情報は得ているが、それだと運行状況やダイヤなど詳しい状況はわからない。*1
 明日から二日かけて帰るのが元来の予定であるが、その経路が使えるかの確認を行っておきたかった。

 結果、改めて台風による被害の大きさが判明してくる。

本来の予定

 その前に僕が事前に組んだ帰りの経路を説明しておく。

 

 上野から始発で神田、そこから中央本線を西下、松本まで出て*2上高地へ立ち寄ってぶらぶら。その後は安房トンネルを経て飛騨の平湯温泉へ、さらにバスを乗り継いで神岡経由で富山へ出て、最後は鉄道で金沢で出て一泊。翌日はぶらぶらと気ままに乗り継いで関西へ。

 

 と、こんな具合の、上高地と長野から岐阜への北アルプス越え、平湯温泉からのバス路線を目玉とする計画であった。

現実

 しかしである。
 中央本線の高尾~大月間が土砂崩れで不通となっており、数日では復旧の見込みがないという。関東から甲斐へ抜けられない。今回は中央線の始発で高尾へたどり着けないとすべてが破綻する旅程である。

 甲府への迂回路としては富士~甲府身延線があるが、それでは遠回りすぎて上高地に寄れない。しかし金沢には到着できる。が、大きな目玉となる上高地へ寄れないのはかなり痛い。

 もっとも一応は候補として残しておく。

 朝イチの高速バスで松本まで出れば、と思って調べると中央道を通るとバスは軒並み運休。中央道が災害で通行止めになっているからだ。迂回路を経由する措置も取られていない。
 一方で東京から河口湖方面への高速バスは動いていた。これは御殿場まで東名を走るから中央道の影響は受けないのだろう。これで富士山駅(旧、富士吉田駅)へ出て、富士急で大月までつなぐ迂回も検討するが、上高地へ立ち寄る時間が消える。

 それなら新幹線で長野を経由して松本まで行くのが一番早く着くかも、と調べると篠ノ井線篠ノ井~明科、要するに長野から松本へ抜ける部分がこれまた災害で運休していてたどり着けない。そしてこの時に初めて千曲川の堤防決壊と長野新幹線車両センターの水没を知る。E7/W7系が半分ほど沈んだあの画像とともに。*3

 

 北陸新幹線が寸断されたいま、上高地どころかまっすぐ金沢まで出るのも厳しい情勢である。
 よしんば迂回して金沢へ出るとしても、松本へ出る手段が富士経由しかないとあっては上高地はあきらめざるを得ない。

 非常に悔しいが、金沢を泊地としている以上はやむを得ない。

 また台風に煮え湯を飲まされるのか、俺は……。非常に悔しい。

 

模索、三つの案

 歯がゆく思っていても明日は迫ってくる。早急に対応を考えなければならない。
 台風の被害による運休などを鑑みて、明日の経路を総合的に再検討することとした。その結果、優先度の高い順に以下の数案を俎上に載せる。

 

  1. 金沢まで高速バスで出てルート復帰(明日の予定はまるまる変更)
  2. 金沢の宿をキャンセルして新幹線等でまっすぐ関西へ帰る(旅の途中打ち切り)
  3. 身延線経由で甲府を経て松本へ、上高地は省略して平湯でルート復帰

 

 大きく分けると金沢に泊まる(1案3案)か、旅を打ち切る(2案)かの二つである。

 松本、富山、金沢へ出るには名古屋経由という方法もあるにはある。松本へは中央本線の特急「しなの」、富山へは高山本線の特急「(ワイドビュー)ひだ」、金沢へは富山経由もしくは北陸本線経由の特急「しらさぎ」が通じているからだ。

 しかし名古屋まで行くのならば、僕の性格上そのまままっすぐ関西へ帰る方を選択する。その迂回でかかる交通費もばかにはならないからだ。三度の飯より乗車好きであるが、当初の予算を大きく超えてまで乗ろうとは思えない程度にはケチな人間である。あくまで途上という形で金沢に寄るのが大事だった。

 いずれにせよ北陸新幹線が長野以遠で不通になっているので、金沢へ素直に出るには高速バスしか方法がない。
 まずはこれを探ろう。で、空席があれば予約してとりあえず支払い時間分まで確保しておく。

 

 僕は昔から高速バスはバス会社によるもの(いわゆる旧高速乗合バス)を選ぶようにしており、それ以外のもの(「WILLER EXPRESS」などの旧高速ツアーバス)は避けている。これは安全性などの観点からというよりも、鉄道会社系のバスや地方のバス会社のブランドを好んでいる点が大きい。僕の移動好きは鉄道好きからの派生なので、古くからのそういった事業者に愛着を持っているからだ。

 高速乗り合いバスと高速ツアーバスが「新高速乗合バス*4に統合されてすでに6年が経ってもその考えは変わっていない。頑固だからね。

 しかしである。東京から金沢へ行くバスをざっと調べるとそのほとんどが旧高速ツアーバス系である。しかも夜行便ばかりで、すでに予約が締め切られているものや満席のものばかりだ。

 そりゃそうだよな。東京~金沢の大きな行き来は北陸新幹線が主役で、それ以外の時間帯となれば夜行となるのも仕方なし。そしてその新幹線が不通となっている現状、この区間を往来したい人がその他の交通機関、高速バスや飛行機に押し寄せるのは火を見るより明らかだ。
 満席では僕がツアーバスを避ける避けない以前の話だ。

 

 上高地へも金沢へも出られないのならばもう打ち切りもやむを得ないかな。その分のお金は浮くわけだし。そう考えながらなおも粘って調べていると、JRバスの新宿~金沢の昼行便がヒットした。

 西日本JRバスと西武バス共同運行の「金沢エクスプレス」号だ。この区間で西武バスが運行するのかと思ったが、帰ってから調べるともとは石川県を地盤とする北陸鉄道との共同運行がなされていた時期がある関係からだそうだ(北陸鉄道は2007年に運行撤退)。

 ちなみに夜行便の「グランドリーム金沢」「青春ドリーム金沢」は西日本JRバスJRバス関東による共同運行である。

 

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 そんな中で面白いのは下りの「金沢エクスプレス」3号だ。(左表の右側)

 これは新宿を22時に出て金沢に5時55分に到着する、実質的な夜行便なのであるが、西武バスによる運行なので「ドリーム金沢」を名乗っていない。運行会社によって便名を分けているのだ。
 ちなみにその折り返しとなる西武バスによる東京行きの「金沢エクスプレス」4号は昼行便で、13時半に金沢を出て21時12分に新宿に着く。

最後の一席

 余談が長くなった。

 この「金沢エクスプレス」の金沢行き昼行便となる1号が奇跡的に1席だけ空いているではないか。
 これはもう金沢へは行けと言う天啓なのでは?
 予約、の前に金沢行きの手段が見つかったので最終の検討を行う。
 金沢へ行くか、まっすぐ帰るか。

 

 そもそもである、私は本来の上京の目的であったテキレボが中止となってもこの旅を決行している。それは台風ごときですべてを取り消したくはないという意地の貫徹によるところが大きい。いまここで打ち切ってはそれを自らへし折ってしまうことになる。

 

これに関して、僕はなくなった部分だけを空白にしておけばよいと思っていて、中止によって出発時間やらの細部を組み替えたくなかったのである。今回の行動自体がそういう性格の下で行われている。 これに限らない。途中で何かが抜け落ちたとしても、可能な限り当初の予定に沿って動いていく。そういう性格なのだ。臨機応変ができないというか、臨機応変に動く場合は「臨機応変に動く」こと自体を予定に組んでいる。本末転倒、まったく機に応じて動いていない。

それでも上京したやつの話(2019年10月11日:1日目:グランクラス・リベンジ) - 雑考閑記

  行けるのならば行く。初日に決めた意思に従い私は金沢へ出ると決めた。さっそく近くのコンビニで発見して予約を確定させる。
 外は雨が降っていた。そして昨日の暑さが嘘のように冷えている。

別の楽しみを見出す

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 上高地へは行けなくなったが、代わって乗るのは昼行で東京から金沢へ8時間の高速バスだ。新幹線で3時間もあれば行けるところを、バスは479km8時間(表定速度60km/h)かけるという移動好きの僕にはたまらない代替えとなった。
 しかもこれだけのってわずか5100円という破格。

 というか、この値段が大きな決め手となった。

 

 上信越道が通行止めということは迂回で関越道経由だろうか。谷川岳を貫通する日本第二位の道路トンネル*5関越トンネルを体験できるかもしれない。

 そもそもバスタ新宿から高速バスに乗るのが初めてである。

 何時間前に行って過ごそうか。その前に東京駅で何の駅弁を買おうか。

 乗車券を手にすれば、俄然そういった楽しみが湧いてくる。

 

 しかしそれにしても台風の影響に終始振り回される旅である。しかしそれはあくまで不要不急の僕の楽しみだ。被害を受けられた方々が一日も早く平穏な生活を取り戻せることを祈っております。


 そして友人にもお礼を申し上げたい。

 インターネットを使えなければ高速バスという案は浮かんだとしても、実際に予約を取って予定を変更することはできなかっただろう。それどころか中央本線の不通も現地なり当日なりに知って、時間や時刻表と必死に格闘していただろう。パソコンのおかげでこうして事前に余裕をもって予定を変更できた。
 僕が旅先で臨機応変に動けないのはこういう情報弱者な部分も少なからずあるのだろうと思う。その後もネットでしばし台風関連の情報を得て友人に別れを告げた。

 

冷え込んだ夜

 先ほども書いたが、昨日日中の暑さが嘘のような冷え込みだ。

 一気に秋がやってきたような気温のなか、半袖で宿へ戻った。

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 今日の夕飯。

 安売りのすあまで安くすます。パンは明日の朝食。賞味期限は昨日までだが大丈夫だ。
 23時に横になる。明日の出発時間は4時台の始発から11時の高速バスと7時間遅くなっているが、遅刻してはしゃれにならないので慎重を期して早めに眠る。眠った。

 

 ……のだが1時に目覚める。
 前日も書いたが旅先では緊張しているのか興奮しているのか、あまり長く眠れない。短い睡眠を数回繰り返すことがほとんどだ。それにしても2時間睡眠は短すぎるのでそのまま横になって眠ろうと試みる。が、3時になっても眠れる様子がなかった。
 仕方ないので持ってきていた本の続きを読む。本を持ってきていて本当に良かったと思う。

ks2384ai.hatenablog.jp

 ツチノコは埋められた土瓶から抜け出たトウビョウを見間違えたのでは? みたいなネタが浮かぶ。

 

 そのまま本を読み終える4時ごろ。眠くならなそうだ。眠っても今からだと遅刻する気がする。
出発準備を終えて、誤って寝てしまわないようシャワーを浴びて、あるかもわからない眠気を吹き飛ばす。パンを食べてテレビをつけて時間を適当にまぎらわして新宿へと出立した。

 

 

*1:余談であるが友人宅にはテレビ、新聞がないので、昨日の午前から報道に接していなかった。

*2:塩尻からは篠ノ井線だが、まあそんな細かいことはよい。

*3:後日に知るが、この中には3日前に乗ったF16編成も含まれていた。

*4:高速ツアーバスは廃止。

*5:第一位は首都高の山の手トンネル。山岳道路トンネルとしては依然として第一位。いずれも2019年10月時点